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個人塾でもできる講師研修と指導の標準化|初回研修・同席・チェックリストで「先生によって違う」をなくす段取り

公開日: 2026年9月27日

個人塾でもできる講師研修と指導の標準化|初回研修・同席・チェックリストで「先生によって違う」をなくす段取り

アルバイト講師を採用したものの、研修といえば「初日に自分の授業を横で見てもらって、翌週から任せる」だけ。しばらくして保護者から「前の先生のときは宿題の確認をしてくれていたのですが……」と言われ、はじめて講師ごとに授業のやり方がばらついていたことに気づく。個人塾・小規模塾の塾長から、こうした話をよく聞きます。

大手のように研修担当者も、研修用の教材も、まとまった研修日もない。塾長自身が授業を持ちながら講師を育てるしかない──それが個人塾の現実です。この記事では、その条件のなかでも指導の「揃えるべき部分」を揃え、講師が入れ替わっても授業の質が落ちにくくなる研修と標準化の段取りを、初回研修・同席・チェックリスト・マニュアルの4つに分けて整理します。採用そのものの段取りは「個人塾のアルバイト講師採用、募集から初回勤務までの段取り」にまとめていますので、あわせてご覧ください。

個人塾の講師研修が「見て覚えて」になってしまう3つの理由

研修が手薄になるのは塾長の怠慢ではなく、個人塾の構造によるものです。原因を分けておくと、対策も分けて考えられます。

3つに共通するのは、研修が「塾長の時間」と「塾長の記憶」に依存していることです。標準化とは、その依存を減らし、紙や記録の側に判断の基準を移すことだと考えると進めやすくなります。

まず決める:何を「揃える」か、何を「任せる」か

標準化というと「全講師に同じ授業をさせる」と受け取られがちですが、少人数の塾でそれをすると、講師の持ち味が消え、本人のやる気も下がります。大切なのは、揃える部分と任せる部分を最初に線引きすることです。目安は「保護者との約束にかかわるかどうか」です。

揃える(塾として約束していること)任せる(講師の持ち味に委ねること)
授業の開始・終了時刻と、開始5分・終了5分の使い方説明の順序や例え方、板書の仕方
宿題の出し方・確認の仕方(毎回同じ確認)雑談の量、声のかけ方、褒め方
授業後に残す記録の項目と締切演習と解説の配分の細かな調整
生徒・保護者への言葉遣い、連絡は塾の窓口を通すこと生徒の得意分野に合わせた教材の選び方(範囲内で)
体調不良・遅刻・トラブル時の連絡先と手順—

左の列は、講師が変わっても保護者が「同じ塾に通っている」と感じるために欠かせないものです。右の列は、講師本人が工夫し、成長できる余地として意図的に残します。線引きを講師にも最初に伝えておくと、「決められたことばかり」という不満と「何も決まっていない」という不安の両方を防げます。

初回研修90分の型:授業の前に必ず伝える5項目

初回研修は「授業のやり方を教える場」ではなく、「この塾で講師として動くために最低限必要なことを渡す場」と割り切ると、90分に収まります。授業の技術は、次の同席の段階で身につけてもらいます。

時間項目伝える内容
15分1. 塾の考え方と保護者への約束どんな生徒に、何を大切にして教えているか。前章の「揃える」5つと、その理由。
20分2. 1コマの流れ開始前の準備、開始5分(前回の宿題確認)、本編、終了5分(宿題の確認・次回予告)、終了後の記録までを時間軸で。
20分3. 記録の書き方授業後に何を、どこに、いつまでに書くか。指導報告書の4項目を実際に1件、その場で書いてもらう。
15分4. やってはいけないこと生徒・保護者との個人連絡、個人情報の持ち出し、独自の宿題や教材の追加、体罰や人格に触れる叱責。理由も添えて。
20分5. 困ったときの動き方質問に答えられない、生徒が泣く・騒ぐ、保護者から直接話しかけられる──場面ごとに「誰に、どう伝えるか」。

5項目をA4で1〜2枚の資料にしておき、研修では読み上げるのではなく「なぜそうするのか」を話すことに時間を使います。資料は次の講師にもそのまま使えるので、2人目以降の研修準備がほぼゼロになります。

初回研修でよくある失敗
教科の指導法を熱心に教えすぎて、記録の書き方や困ったときの連絡手順が抜けることです。教科の力は面接の段階である程度分かっていますが、「記録を残す」「勝手に判断しない」は、伝えなければ身につきません。授業そのものより、その前後の動きを優先して伝えましょう。

同席は「見学→補助→担当」の3段階で

個人塾の研修で一番効くのは、やはり実際の授業を通した育成です。ただし「1回見せて翌週から任せる」では見せた意味が薄くなります。役割を段階的に移すことで、塾長の負担を増やさずに定着させられます。

段階講師の役割塾長の役割目安
1. 見学塾長の授業を、チェックリストを手に見る。「開始5分で何をしたか」「宿題確認の言い方」など見る観点を先に渡す。いつも通り授業をする。終了後5分で「なぜそうしたか」を1〜2点だけ話す。1〜2コマ
2. 補助塾長の授業の中で、宿題確認や演習中の机間指導など一部分を担当する。本編を進めながら、講師の担当部分を見る。2〜3コマ
3. 担当1コマを通して担当する。授業後の記録も自分で書く。最初の1〜2回は同室で別の作業をしつつ見守り、以後は記録で確認する。以後継続

この流れは、塾長が自分の授業を通常どおり行うだけで成り立ちます。「講師が同じ教室にいる」こと自体が研修になるのが個人塾の強みです。

フィードバックは「事実→良かった点→次に1つ」

同席のあとの声かけには型を決めておきます。「事実(何をしていたか)→良かった点→次の1コマで試すこと1つ」の順で、3分以内。「全体的にもう少し丁寧に」といった抽象的な指摘は、講師が何を変えればよいか分からず、萎縮につながります。

「宿題の確認で、できていなかった問題を生徒に声に出して読ませていましたね(事実)。本人が自分で気づける進め方で良かったです(良かった点)。次は、確認に使った時間を報告書の『次回への申し送り』に一行書いてみてください(次に1つ)。」

チェックリストとマニュアル:A4で5枚から始めて育てる

授業チェックリストは10項目以内・3区分で

「揃える」と決めたことを毎回守ってもらう仕組みが、授業チェックリストです。作るときのポイントは、項目を10個以内に絞り、授業前・授業中・授業後の3区分に分けること。多すぎると誰も見なくなります。

チェックリストの例(個別指導)
【授業前】□ 前回の記録と申し送りを読んだ □ 使う教材・プリントを机に用意した
【授業中】□ 開始5分で前回の宿題を確認した □ つまずきは「どこで」止まったかをメモした □ 終了5分で次回の宿題を生徒と一緒に確認した
【授業後】□ 報告書の4項目を当日中に書いた □ 保護者に伝えるべきことがあれば塾長に申し送った

講師本人の自己点検にも、塾長が同席や記録確認のときに見る観点にも使えます。どちらの場合も「点数をつける」ためではなく、「揃えるべき部分が揃っているか」を本人と塾長が同じ目で見るための道具と位置づけておくと、講師も受け入れやすくなります。

チェック項目の一部は、授業後の記録に組み込んでしまうのが最も確実です。たとえば報告書の項目に「宿題の実施状況」「次回への申し送り」があれば、それを書くこと自体がチェックになります。記録が1か所に集まっていれば、塾長は同席しなくても、記録を読むだけで各講師の授業の様子をつかめ、講師の急な欠勤や担当交代のときにも引き継ぎが途切れません。

マニュアルは研修資料+チェックリストの5枚から

「マニュアルを作らなければ」と思うと分厚いものを想像して手が止まりますが、個人塾に必要なのは、初回研修の資料とチェックリストがそのままマニュアルになっている状態です。最初に用意するのは次の5枚で十分です。

  1. 塾の考え方と「揃える5つ」(初回研修の項目1)
  2. 1コマの流れ(項目2)
  3. 記録の書き方と記入例(項目3)
  4. やってはいけないこと・困ったときの連絡手順(項目4・5)
  5. 授業チェックリスト

マニュアルは作った瞬間から古くなります。更新を続けるコツは、「講師から質問されたこと」「保護者から指摘されたこと」が出たら、その週のうちに1行足すという習慣にすることです。質問が出たということは、マニュアルに書かれていなかったということです。保護者からの苦情や要望も、再発防止策としてマニュアルに反映すれば、個人の反省で終わらせずに仕組みに戻せます。

保管場所は紙でも共有ファイルでも構いませんが、講師が授業前に見返せる場所に1つだけ置き、古い版は残さないようにします。

まとめ

個人塾の講師研修は、大手のまねをする必要はありません。「揃える」と「任せる」の線引きを決め、授業前後の動きを中心にした初回研修90分を1枚の資料にし、見学→補助→担当の3段階で塾長の授業を研修の場にし、10項目以内のチェックリストと記録で日々の授業を揃える。そして質問や指摘が出たらA4のマニュアルに1行足す。この積み重ねが、講師が入れ替わっても「同じ塾に通っている」と保護者に感じてもらえる塾をつくります。まずは今週、自分の授業の「開始5分・終了5分で何をしているか」を書き出すところから始めてみてください。それが、マニュアルの最初の1枚になります。

この記事を書いた運営より

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