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塾の講師間で生徒情報を引き継ぐ仕組み|担当交代・欠勤時にも指導が途切れない記録の残し方

公開日: 2026年9月17日

塾の講師間で生徒情報を引き継ぐ仕組み|担当交代・欠勤時にも指導が途切れない記録の残し方

授業開始の1時間前、担当講師から「熱が出たので今日は行けません」と連絡が入る。代わりに入れる講師は見つかったものの、その生徒がいまどの単元をやっていて、前回どこでつまずいたのか、代わりの講師には分からない。結局「今日は復習にしようか」と、その場しのぎの授業になってしまった──。個人塾・小規模塾では、こんな場面が珍しくありません。

欠勤だけではありません。大学生講師の卒業や試験期間による担当交代、生徒側の希望による担当変更、そして退職。そのたびに「前の先生は分かってくれていたのに」と保護者の信頼が揺らぎます。

この記事では、講師が交代しても指導が途切れないように、「何を」「いつ」「どこに」残せばよいかを、小規模塾でも続けられる形に絞って整理します。

引き継ぎがうまくいかない3つの原因

引き継ぎの失敗は、講師の熱意や能力の問題ではなく、多くの場合は次の3つの構造から生まれます。

言い換えると、引き継ぎがうまくいく塾は「引き継ぎが上手な講師がいる塾」ではなく、日頃から引き継げる形で記録が残っている塾です。急な欠勤の日に引き継ぎ資料を作ることはできません。普段の授業の後に、引き継ぎに使える記録を少しずつ残しておくことがすべてです。

引き継ぐ情報を「固定情報」と「流動情報」に分ける

「生徒のことを全部書き残そう」とすると、書く側も読む側も続きません。引き継ぎに必要な情報は、変わりにくい「固定情報」と、授業のたびに変わる「流動情報」の2種類に分けて考えると、整理しやすくなります。

固定情報(入塾時・変更時に更新)流動情報(授業ごとに更新)
内容の例学校・学年・受講科目・使用教材/志望校や目標/通塾曜日と時間/保護者の要望・注意点(連絡手段の希望、宿題量への考え方など)/家庭環境で配慮が必要なこと今日やった範囲と到達点/つまずいた箇所と対応/宿題の内容と提出状況/次回やること/気づいたこと(集中の様子、体調、本人の発言)
置き場所生徒ごとの「基本カード」1枚生徒ごとの記録(日誌)に時系列で追記
書く人塾長(面談や入塾手続きの担当者)その日の担当講師
読むタイミング初めてその生徒を担当する前毎回の授業前に直近2〜3回分

代わりの講師が授業前に見るべきものは、「基本カード1枚」と「直近2〜3回の記録」だけ、と決めておきます。これなら10分で目を通せますし、記録を書く側も「この2つに入らないことは書かなくていい」と判断できます。

保護者からの要望は「固定情報」に必ず残す
「宿題は多めにしてほしい」「テスト前は英語を優先してほしい」といった保護者の要望は、前任の講師が口頭で受けて、そのまま引き継がれないことがよくあります。担当が変わった途端に方針が変わると、保護者は「伝えたのに」と感じます。面談や連絡で受けた要望は、その日のうちに基本カードに追記する習慣をつけておきましょう。

授業後3分で書ける「引き継ぎメモ」の型

流動情報を残す記録は、毎回書くものなので、短く・同じ形で・その場で書けることが条件です。おすすめは、次の3項目に絞った型です。

  1. やったこと・到達点:教材名とページ、正答率など事実を1行。「ワークp.40〜43、一次関数の変化の割合。p.43の文章題は2問中1問正解」
  2. つまずきと対応:どこで止まり、どう教えたか。「変化の割合を『yの増加量÷xの増加量』と逆にする。表を書かせて確認したら通った」
  3. 次回やること・申し送り:次に入る講師への指示。「次回はp.44の類題から。表を書く手順を最初に確認してから進める。宿題はp.43の残り」

この型には2つの利点があります。1つは、3つ目の「次回やること」があることで、誰が次に入っても最初の10分の動きが決まることです。急な代講でも「次回やること」を読めば、少なくとも授業の入口で迷いません。もう1つは、2つ目の「つまずきと対応」がそのまま指導報告書の材料になることです。引き継ぎのための記録と保護者向け報告の材料を別々に作らずに済みます。

「気づき」は事実と分けて書く

「今日は元気がなかった」といった気づきも大切な引き継ぎ情報ですが、事実と講師の推測は分けて書きます。「宿題を忘れたのは今月2回目。本人は『部活で帰りが遅い』と話していた」のように、見たこと・聞いたことをそのまま残すのが原則です。決めつけた解釈を残すと、次の講師が見当違いの対応をしかねません。

書く時間を確保する

型があっても、書く時間がなければ続きません。授業終了後の5分を「記録の時間」として勤務時間に含める、あるいは授業の最後の3分で生徒と一緒に「今日のまとめ」を確認しながらその場で書く、といった形で、記録を授業の一部として組み込みます。講師の勤務時間の扱いは、講師のシフト管理とあわせて決めておくと運用がぶれません。

場面別の引き継ぎ手順

日頃の記録があれば、あとは場面ごとの手順を決めておくだけです。塾で起きやすい3つの場面について、最低限の流れを整理します。

場面手順ポイント
急な欠勤・代講①代講の講師を決める ②基本カードと直近2〜3回の記録を渡す ③授業後、代講講師が同じ型で記録を書く ④翌日、担当講師が記録を読んで状況を把握する「次回やること」があれば代講講師は迷わない。保護者には担当が変わったことを一言伝えると安心につながる
計画的な担当交代(卒業・試験期間・生徒側の希望)①2〜3週間前に交代を決める ②前任者が基本カードを最新化し、「引き継ぎ用まとめ」(現在の課題・方針・保護者の要望)を追記 ③可能なら1回、新担当が授業に同席 ④保護者に交代を案内し、新担当から一言あいさつ交代の理由と今後の方針を保護者に先に伝える。「引き継ぎ用まとめ」は基本カードに書けば別資料は不要
講師の退職①退職日の1か月前を目安に担当生徒の一覧を作る ②生徒ごとに新担当を決めて上記の計画的交代の手順を進める ③私物のノートやスマホに残っている生徒情報を塾の記録に移し、個人の端末からは削除してもらう個人LINEでの保護者とのやり取りが残っていると引き継げない。退職時に慌てないよう、日頃から塾の窓口に集約しておく

退職時に特に注意したいのは、生徒や保護者の情報が講師の個人端末に残ることです。引き継ぎの問題であると同時に、個人情報の管理にも関わります。連絡手段の整理は「塾の保護者連絡、講師の個人LINE頼みは危険?」、情報管理の基本は「塾が守るべき生徒の個人情報管理の基本」で詳しく整理しています。また、新しく入る講師には、採用時の初回研修で記録の型を最初に教えておくと、引き継ぎを受ける側の負担も減ります。採用から初回勤務までの段取りはこちらの記事をご覧ください。

記録の置き場所を1つにする

型を決めても、記録が講師ごとのノートや紙のファイルに散らばっていては、代講の講師が授業前に探すことになります。引き継ぎの最後の仕上げは、「生徒ごとに、時系列で、誰でも見られる場所」に記録を集めることです。

方法向いている塾限界
生徒ごとの紙ファイル講師が1〜2人で、教室が1つ教室外から確認できない。急な代講で自宅から事前確認できない
共有のエクセル・スプレッドシート講師数人まで。パソコンで書く習慣がある生徒が増えるとシートが増えて探しにくい。保護者への報告とは別に作る必要がある
塾管理システムの生徒記録講師が3人以上、または保護者報告・出席と記録をつなげたい導入と講師への説明が必要。記録の型は自塾で決めておく必要がある

どの方法でも大切なのは、「生徒名で開けば、基本情報と直近の記録がまとめて見える」状態にすることです。一方で、出席・指導記録・保護者への報告・面談記録が別々の場所にあると、担当交代のたびに4か所を集める作業が発生します。講師が増えてきた段階で、1か所にまとめる方法を検討するとよいでしょう。塾長が「自分しか知らない情報」を減らしていく考え方は、「個人塾の塾長が今日からできる業務効率化」でも触れています。

まとめ:引き継ぎは「当日」ではなく「毎回の授業後」に作る

講師の欠勤や担当交代で指導が途切れるのは、講師の問題ではなく、引き継げる形で記録が残っていないことが原因です。引き継ぐ情報を、入塾時に作る「基本カード」の固定情報と、授業ごとに残す「引き継ぎメモ」の流動情報に分け、メモは「やったこと・つまずきと対応・次回やること」の3項目に絞る。急な欠勤・計画的な交代・退職の3つの場面の手順を決め、記録を生徒ごとに1か所へ集める。この形ができると、誰が入っても授業の入口で迷わなくなり、保護者にも「先生が変わっても、ちゃんと見てもらえている」と伝わります。

まずは今週、次の3つから始めてみてください。

  1. 生徒1人につき1枚の「基本カード」を作り、保護者からの要望欄を設ける
  2. 授業後の記録を「やったこと・つまずきと対応・次回やること」の3項目に統一する
  3. 「急に休むときは、基本カードと直近3回の記録を代講の先生に渡す」と講師全員に伝える

記録が1か月分たまれば、次に講師が休んだ日に、その効果を実感できるはずです。

この記事を書いた運営より

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